HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 11

やあやあ久しぶり。

いきなりだけど労わってくれ。

寅に手伝わせた代償に、寅の分の布団まで布団を作らされることになったのは記憶に新しい。
けど、まさか父上や母上の分まで作らされるとは思わなかった。
俺の竹布団に感動した乳母が父上に密告したらしい。
仕方なく父上の分の竹を刈り取りに行こうと思ったら、今度は母上に見つかって部屋に連行された。

ああ、俺の頭皮が心配だ。
お約束のごとく扇の先で小突かれ、自分の分の布団も請求された。
いや、もちろん作るのはいいけどね。
寅や大ウケしてた父上はともかく、母上に竹布団はどうかなと思ってたんだよ。
雅が服着てるみたいな、優雅に過ごすことに重点を置いてる母上が。
やっぱり寒かったのか。

さすがに今回は量が量だし、力仕事も多いので父上から人手を借りた。
三人分と、ついでに俺の座布団の分も取ってくることにしたから結構大人数。
なんか、すみません父上の我侭で!って言いたくなった。
これ手伝っても臨時の給金なんて出ない上に、普段の仕事もなくならない。
我侭もほどほどにねー。

ちょっとした謎の集団と化して山狩りを決行した俺達は、山積みの竹束を手にして屋敷に戻った。
何しろ量があるし父上の命令だから、多少仕事の邪魔になることは承知で作業に取り掛かることに。
俺の分だけ作ってた時とは違って量も大量だし、当主の命令だから堂々と庭のど真ん中を占領する。
前回は庭の隅っこでちまちま作業してたけど、今回はギャラリーが多い。
俺みたいな餓鬼が先導して大作業をしてるのが気になるらしい。

どうでもいいけど、日々の仕事量は変わらないんだから見物しすぎて仕事をおろそかにするなよ?


人手として借り受けたのは当然大人だったし、興味を示した家人達が空き時間に手伝ってくれたから数日で作業が終わった。
量は増えたのに作業時間は前回よりずっとマシだな。
そりゃ、子供の手で作るより早く出来上がるのは当然だ。
これで我が家の人間は総員ふかふか布団完備である。


そして今回、力仕事は代わってやって貰ったので代わりに俺が別に作っていた物がある。
父上の布団を作る代わりにある程度までなら、という条件付で竹布団のような発明品?を作る許可を貰ったのだ。

竹刈りに山に踏み込んだ際、あちこちで採集してきた土やら草やら。
まだ試験段階だがこれから俺のお供になること必須だ。


何を作っていたかと言うと、手作りクレヨンである。
正確にはクレヨンではないのだが、クレヨンを目指して作ったのでクレヨンである。

なんでこんな物が必要なのかというと、すべての元凶は寅である。
内面は大人な俺と違って寅は正真正銘お子様なので、また毒でも食わないか弟は心配なのだ。
身内の心配は当然として、大人として子供の安全を確保するのも当然である。
父上に閲覧許可を貰った書物や庭師、家人、薬師の話を聞いて付近に生えている植物で毒性のあるものは寅の守役に伝えてはある。
けれど所詮口伝えの上、守役に頼るしかないのではあまり安心していられない。
考えた末、寅に毒草図鑑を持たせようと思ったのだ。

図鑑と言ってもたいした物ではないが。
初めは巻物状にして首なり腰から下げさせようと思ったのだが、寅の場合墨で書くと濡らしかねない。
油性インクが作れないかなと考えたのだ。

油性インクはわからないが、油を混ぜれば撥水性はあると思いたい。
墨に油を混ぜて、とそこまで考えた所で思いついたのがクレヨンだったのだ。
ついでにクレヨンを作ってしまえば持ち歩きにも便利だし。
携帯用の墨と筆はあるけどあれは結局水が必要になるしな。

とりあえず油と墨、あとは適当に蝋でも混ぜたらどうにかなるかなと思ったんだが。
けどこの材料だけだと固まっても今度は上手く紙に色がうつらない気がした。
なので粉系統を混ぜれば物自体の摩擦が増えるかなと思ったのでとりあえず、灰を混ぜてみた。
灰は灰で洗濯だったか洗い物だったかに使うのであんまり使いたくはなかったのだが。

ちなみに墨以外では岩絵の具から連想して、山の土を採って来た。
赤土とか黒土とかあるじゃん。
砂を混ぜたら紙に書く前に紙にヤスリ掛けてしまいそうだったから混ぜるのは泥水だけど。
あとは植物から取った色水関係かな?

今回はまだ上手くいくかわからないので、試しに黒で作ってみることにした。

溶かした蝋と混ぜて、潰さずに取っておいた竹の中に流し込む。
あとは冷えて固まったら念の為数日乾燥させて完成である。

適当に思い付きで作ったが、果たして上手くいくのやら?
父上達の竹布団もこれから乾燥させないといけないし、しばらくは庭は俺の実験場になりそうだ。

落ち着いたらまた連絡します。

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