HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 14

やあやあ久しぶり。

なんか褒められたよ、祝ってくれ。

寅から取り上げたままになってたクレヨン、そのまま父上が持ってたらしい。
持ち歩きに便利だって褒められた。

必要に駆られて作っただけだけど、褒められると意外に嬉しいわ。
祝うついでに褒めてくれ。

普段あんまり褒められないから。
たまに褒められる時は存分に褒められると良いと思うよ。

酷いよねー、これでも結構一生懸命やってるんだけど。
でもいくら頭が大人だとしてもさ、やったことないことなんて初めからできるわけないじゃないか。

文字はあの通りだし、漢文とか難しいし。
教養として華道と茶道とかも習ってるけど、華道は感性の問題だし。
茶道は作法が難しくて。
作法を気にしてばっかりいるとなんかガチガチになって怒られるし。

胸張ってこれは得意って言えるのは薬草の知識くらいだよ。
けどこれは武家の子としては褒めて貰えない。

俺、薬師とか職人の家に生まれた方が良かったんじゃ?
なんか家業で必要とされる特性と俺の特性が合ってない気がするよ。

個人の特性で仕事を選べるって大切だと思うよ?俺。

いいよもう、なんで武家なのに教養が必要になるんだよ、って突っ込んだこともあるんだけど。

あれですよー。
教養があるってことは生活に余裕があるとか、頭とか要領がいいって事の証明だったりするから。
一見すると関係なさそうだけど実際に刀で斬り合う以外の所でも、所謂優雅な戦いというか。
見栄の張り合いが繰り広げられてたりするんだよね。

他にも陣形だとかも習わされるみたいだけど。
それはもっと大きくなってからみたいだ。

そんなの使う事態になんかなりたくないけどね。



ああ、そんなことより。

寅に持たせる予定の毒草一覧が完成したよ。
あちこち駆けずり回ってる寅に持たせるもんだから、耐久性を考えて布にした。
木簡にしようかとも思ったけど、かさばるし、ある程度厚くしないと糸とか通せないし。
というか何より、糸を通す穴とかがまだ俺には難しそうだったし面倒臭かったり。

布も素材によっては結構するんだけど、まあ寅事件もあるし、布が必要な理由を説明して布を分けてもらった。
強度について考えてみたけど、引っ張ってみた所で子供の力じゃ比較できないからやめておいた。

鼻緒の切れた町娘に格好良く手拭いを千切って直してやる、なんてことを思い出したけど。
あれが本当なら昔の布って強度はあんまり期待できないのかも。


一通り書物から仕入れた範囲の毒草と庭師に聞いた物、あとは庭師やら屋敷で働いてる人間に聞いた範囲の毒草。
ついでに知ってると便利だとか、生活の豆知識になる範囲の薬草なんかも。
この周囲一帯の気候とか、聞いた話の中で整理して、付近に生えてるだろう物だけに範囲を絞ってできるだけ忠実に絵を描いた。
もちろん画材はクレヨン。
その為に作ったんだし。

なんでわざわざこんな手間を掛けないといけないかというと。
子供は風の子って言葉を実践したように落ち着きのない、はっきり言って座学の大嫌いなお子様な寅には毒草だけでも覚えろって言っても無理だ。
ついでに似た薬草の違いを見分ける部分を個別に覚えておくことも無理だろう。

そのせいで俺が手の掛かることをしてるわけだけど、寅に死なれるよりは良い。
血の繋がった家族としても、次男としても。
家督を継ぐなんてやっかいなしがらみの多そうなこと、俺はお断りだし。
冷遇される人生は嫌だけど色々抱えて大変な人生もお断りだ。


そういうわけで、個々の絵と、見分けるポイントなんか精密に書いておいた。
一通り見せた後、ちらとでもこれに書いてあった記憶のある植物は見比べてから触るようにすることにさせれば大丈夫だろう。
ちなみに毒草と薬草では、布をまとめる結び紐の色を変えておくことにした。
ほら、寅馬鹿だから。

あとは虫除けの薬草を煮出して少し薄めた蝋を薄く塗って揉めば終わり。
初めはカチカチだったけど揉んでる内に少し柔らかくなった。
あんまり擦り過ぎて蝋が剥げても困るけど、柔らかくないと巻けないしね。

これを竹から作った入れ物に入れて紐で首から下げられるようにした。
腰から下げてもいいけど、失くしそうだし。
クレヨンが擦れて剥げないように蝋を塗ったけど、ついでに布自体も上手い具合に撥水してくれればいいな。
終わってからニカワとか塗っても良かったかもと思ったけど、やっぱり無理だ。
あれはかぶれるって言うし。
痒いのは嫌だ。


しっかり寅の首に付けておくことにするよ。
寅の首に鈴。
保険って意味ではある意味正しい。
保険の恩恵を受けるのが鼠か猫(虎)かの違いはあるけど。


落ち着いたらまた連絡します。

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