HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 15

やあやあ久しぶり。

なんか寅の落書きのおかげで家人の視線が痛いよ、慰めてくれ。

そりゃ確かに、俺が作ったクレヨンのせいで仕事を増やしたけどさ。
でもあれって俺のせいじゃなくて、所構わず落書きをして回った寅に問題があると思うね。
子供にあんなもの持たせたらどうなるか位わかりそうなものだけど、忘れてたんだよ。
俺が無邪気な子供だった頃はとっくの昔に通り過ぎてるんだし、自分自身、紙以外に何かを書くって事をしてなかったんだから。
まさか屋敷中に落書きが溢れるなんて思い付かなかったんだよ。


なんか、気が付いたら赤ん坊になって転生してました、なんて愉快な人生送ってる癖に、俺自身は貧乏くじばっかり踏んでる気がする。


とりあえず今は視線をどうにかしないと。
直接何かされたわけじゃないんだけど、常に見られてるというか。
気になって振り向くと目を逸らされるし。

まともに目を合わせてくれるのは家族以外では乳母と土岐だけだ。

いや、母上の場合は目を合わせるというか、単にまだ襖とかの取替えが済んでないからご機嫌麗しくないだけだが。

けどさすがに襖をタワシで擦るわけにもいかないし。
寅に直接言い辛いからって俺に当たるのは勘弁してくれ。

こう度々小突かれてると、扇タコができそうだな、俺の頭。
タコになったらそこからは髪は生えないよなあ。

今度から頭皮マッサージでもしようかな。


あ、それから首鈴(竹筒だけど)の礼なのか、それとも知ってる草を発見して嬉しかったのか、寅が草をくれた。
ありがとう、嬉しいよ寅。
けどな、それ。

パッと見は薬草に見えるけど単なる雑草だよ。
いや、花咲いてて綺麗だけどね。
弟は悲しいよ、兄上。

薬草の方は白い花だって書いておいたじゃないか。

毒草に触らないって最低限の目的が果たせればいいけどさ。
見分け方とかもきちんと書いてあったんだぞ?
初めてだから今回はいいけどさ、そのうち見分けられるようになってくれよ。

せっかく手間隙掛けて作ったんだしね。

ああ、せっかくと言えば。
せっかく綺麗な花なんだし押し花にして襖の修理に使って貰おう。
上から重ねて貼り付ければクレヨンも誤魔化せるだろう。

セコイ気がするけど仕方ない。
張り替えるのも職人を雇ったりで金がかかるし。
我が家の経済状況を悪化させたりでもしたら俺にも皺寄せが来そうだ。

今もわざわざ費用を掛けてまで何かしてるわけじゃないけど、いざ何か用意して欲しい時に我が家が赤貧だと困る。


とりあえずしばらくは屋敷にいると落ち着かないし、一人だけ人手を借りて抜け出すことにしたよ。
何か面白いことでもあるといいなあ。

あ、珍しい薬草でも探してみようかな。
高価な薬草とかあったら高く売れないかな?

でもよくよく考えてみたら、俺って物の売り買いとかできるのか?
なんか母上の扇が飛んで来るのが見える気がする。


落ち着いたらまた連絡します。

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