HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 17

やあやあ久しぶり。

この前ねだったテーブルセットができたらしいよ、祝ってくれ。

あれがあれば足が痺れないから便利だよね。


朝から父上に呼び出されたよ。
部屋に届けてくれればとも思ったけど、物が大きいから俺が行った方が早いよね。

成長したら使えなくなりました、なんて間抜けなことは俺はしない。
しっかりと俺のサイズに合わせて高さとか幅を調節できるように注文しておいたんだ。

職人に特注するなんてすごく贅沢な気もするけど、大量生産して作業を簡単にしてる現代と違って、この時代じゃ当たり前なんだよね。
というか、よほど飾り気のないもの以外は大抵職人の一点物なんだし。



なぜか邸内の一番奥、何代か前の当主が建てたっていう離れに連れて行かれた。

あれみたいだね。
クリスマスプレゼントを当日まで必死に押入れの奥に隠してるお父さん、みたいな。

しかし、前々から思ってはいたけれど本当に無駄な離れだ。
特に変な謂れがあるわけじゃないけど、当主の部屋の前庭を通らないと行けないから必然的に使われずらい。

だってそんな位置にある部屋になんて住んでたら、一挙手一投足が当主に気を使う。
ちょっと散歩に出ようと思ったら当主とこんにちは、なんてお断りだね。
なら当主が使えば良いと思うけど、離れ自体はとても質素なので当主が使うには障りがあるのだ。
本当、建てた本人は何に使ったのか気になるよ。


離れに入ると、換気はこまめにされていたのか長年使われていなかった部屋独特の臭いはしなかった。
ちなみに、こっちは寅のクレヨン爆撃の被害は受けなかったみたいだ。
父上の部屋の前廊下にも落書きがあったくらいだから、ちょっと意外である。

そして母屋から見てちょうど反対側、屋敷の裏側の庭に面した部屋に机は運び込まれていた。
俺の希望通り、高さや幅を変えたりできて、なおかつ収納も盛り沢山である。
ちなみに素材自体はそれほど高い物じゃない。
買い替えの必要もなく、我が家の経済情勢にも優しい一品である。
拘った所と言えば、できるだけ変形しない素材にして貰ったということだけだ。

薬箪笥の様に、細かな引き出しを多く取り付けたのだ。
もし変形して開かなくなったら一大事である。


父上に礼を言ってから無邪気な子供を装い、性能テストとしてあちこち確認作業をしてみる。
父上の選んだ職人は、忠実に俺の希望を適えてくれていたようだ。
おまけに俺が子供だからか、角が綺麗に削ってあったり、引き出しの開け閉めがしやすいように細工してあったりする。
とても優秀である。
もし何か欲しい物ができたらまた彼に頼むとしよう。
まあ、機会があればだが。

今回はなぜか父上が作ってくれたけど、俺から欲しいと訴えた所で叶えられるかは謎だ。
子供の玩具位ならどうにかなるかも知れないが、俺はそんなもの興味はないし。




つらつらと考え事をしながら引き出しを開けたり閉めたりしてると、父上から声を掛けられた。


ここに引っ越せって?

なんでまた。
父上、実は隠してたつもりが、机を動かすのが一苦労になったことに気付いたとか?
この離れから俺の部屋までって結構遠いしね。
隠すならせめて母屋の物置とかにしておけば良かったのに。
まあ、今更これを動かすのも大変だし、別に良いよ?
机を動かすよりは多少かさ張っても俺の衣類とか薬草の方が運びやすいだろうし。

というわけで、俺の邸内引越しが決定しました。

落ち着いたらまた連絡します。

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