HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 23

やあやあ久しぶり。

例の少年だけど、大分ふっくらとしてきたよ、祝ってくれ。

結局、行く当てもないらしいので引き続き俺が保護することになった。

彼の名前だけど、彦(ひこ)と言うそうだ。

名目上は俺の保護下とか言っているが、実際は俺の話し相手兼離れでの雑用、兼俺の助手のようなことをして過ごしている。
彦は今まで教育を受けていなかっただけであって、存外に知的な少年である。
主に午前中に行われる俺の文字習得兼、土岐や喜一、乳母の娯楽になりつつある童話の作成中、ついでに彦にも文字を教えてみることにした。

彼は俺のように邪魔をする物がなかったからか、それとも生来の利発さからか、割とすんなりと字を覚えた。
まあ彼の場合は言葉遣いや文字の崩し方なんかで悩むことはないんだろうけれど。
ちょっと複雑だ。

けれどどうせなら、知識は多くあった方が良い。
知識は邪魔にならないし、いつか役に立つこともあるだろうし。
物のついでだし、どうせならと思って俺の知識も差し障りのない範囲で教えることにする。
主に栄養学とか清潔を保つことの意味とか。
考えたら薬草の知識以外に俺に教えられることって少なそうだ。
まだあるのかも知れないが、今は他に思いつかない。

追々、思い出したら教えることしよう。



そしてしばらく他に考えたり、やることが多くて後回しにしていたが、いい加減水関係をどうにかすることにした。
いつまでも喜一しか力仕事担当がいないのに負担を掛けるのは心苦しい。

朝起きて顔を洗う桶に一杯の水だって井戸から汲み出さないとないのだ。
ちなみに俺は水が汲めない。
サイズが小さ過ぎるのと純粋に力が足りないのだ。


なのでこの際、まずは水汲みを楽にできないかと思ったのだが。
俺にはポンプの仕組みなんてわからなかったので思い付きで作るしかなかったのだった。

まず、定期的に取り替えることは必須だろうけどパイプは竹でいいだろうか。
隙間はそこだけはきっちり埋めないと不味いので、松ヤニででも固めることにする。
多分大丈夫だと思うんだが。
それを一度井戸の外で特別太い竹に繋げて、水が出てくる道として反対側にも竹でパイプを作る。
排出用のパイプよりも下には水は減らないはずだから、あとは逃げる隙間を無くして水を引っ張り上げてやれば勝手に水は登って来るはずである。

サイズぴったりの弁としては、竹であるなら節以上にぴったりな蓋があるわけがない。
あとは弁が下に下りるときだけ水の流れを遮らない仕掛けを付ければ良い。
節の真ん中をくり貫いてドーナツ状にして、円グラフのようにイチョウ型に切り分ける。
節をいくつか重ねて厚みを出した所で、下から押された時以外は動かないように中心付近に斜めに角度を作っておく。

あとは真ん中に棒を通して、節で作った弁をそれに固定していく。
さすがにこの部分は負荷が激しいから金属で固定するしかない気がする。
何が錆びないか鍛冶屋に確認を取らないといけないな。

井戸のポンプと言われてまっさきに思いつく形状に近くなったそれには、あとは梃子の原理で楽になるように取っ手を付けておけば良い。

鍛冶屋に頼むにしても、まず父上に頼まないといけない。
悲しいかな、俺は自由になる金などないのだ。
まあ、頼んだ部品が出来上がって来る頃には他の部分の作成も終わっているだろう。
材料は山に採りに行けばいいし、細工の方も喜一君が居るからどうにかなるだろう。

多分、俺の考えが間違っていなければ井戸の水は簡単に汲める様になる・・・はず。


落ち着いたらまた連絡します。

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