HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 24

やあやあ久しぶり。

鍛冶屋から注文の品が届いたよ、祝ってくれ。

必死に考えたポンプ(だと思いたい)もあとは金具で繋いでしまえば完成する所まで出来上がっている。

最近気付いたんだが、喜一君は何かしら手作業をしている時が一番楽しそうだ。

しかも異様に腕が良い。
素晴らしいね。
ポンプの用途を教えて、考えていた利用法を話したら、成功したらまた頼もうと思っていた水道類も作ってくれてしまった。
楽しそうで何よりだけど、失敗したらそれほど意味のない物になるんだよ?

思わず突っ込みを入れてしまったが、喜一君は変わらず笑顔だ。
そんなにやたらと信用されると、もし駄目だった時、俺のダメージが大きい。

上手くいってくれるといいんだが。



最後の部品となる金具を取り付けて、未だ不安の残るポンプ(仮)を完成させる。
あとは試運転をしてみれば失敗か成功かわかるんだが。

ここまで作って失敗だった時のことを考えるとなかなか手を掛けることができない。
土岐や乳母、喜一君は俺に遠慮してまだ触れようとはしないし、彦は説明はしたものの、水を汲み上げることができるということに関して信じきれていない様だ。
表現しがたい複雑な顔をしてじっとポンプ(仮)を睨み付けてはいるものの、触ろうとはしない。


仕方なく覚悟を決めようかと思った時、折り良く寅が顔を出した。
離れに顔を出す時に薬草(だと思っているのは寅だけでただの草や花)を持たずに来るのは珍しい。

どうしたのかと思えば、父上に話を漏れ聞いてその足で見物しに来たらしい。
丁度良いのでそのまま俺の代わりに試運転をして貰うことにする。


使い方を説明して、緊張しつつ寅を見守る。
初回は空気圧に期待するには不安が残ったので、すでに中は桶を駆使して汲んだ水で満たしてある。
ポンプ(仮)の本体と井戸に繋がる弁を開いて、本体から繋がった棒をこいでみれば結果がわかる。









今までで一番不安要素が強かった思い付きは、思いのほか上手く言ったようだ。

すでに始めに組み入れた分の水を出しても未だに水を吐き出し続けている。

疑心暗鬼気味だった彦を筆頭に、その場に居た人間が歓声をあげた。
どうやら上手くいった様で、俺も一安心だ。

寅はポンプ(仮をつける必要はもうない)が気に入ったようで大喜びで水を出し続けているし、勿体無いのですでに喜一君が作ってくれていた水道も使ってみることにした。

飛沫を上げるほどとは行かないものの、結構な勢いで流れ出す水を拾う様にこちらも竹で作った水道を移動させる。
単に竹を組み合わせて作っただけのそれは、単純なだけに失敗することもなく湯殿より高い位置に設置しておいた樽に水を流し込む。
直接湯殿に運ばなかった理由は単純に、井戸水が冷たすぎるからである。
昼間のうちに水を汲んで温くなった水を沸かした方が楽だという、至極当然のことだ。

今まで蒸し風呂に甘んじていたが、これで心置きなく湯を張った風呂に入ることができる。
湯殿の外には蒸し風呂でも使っていた窯があるのでそこから熱を伝わらせてやれば風呂を沸かすことも簡単だ。
そちらの仕掛けは喜一君がすでに済ませてくれてある。



今夜の風呂が楽しみだ。

ちなみにもちろん、調理場の方や洗濯場にも水道を繋げてある。
少し見栄えは悪くなるけれど、重労働から開放されるのだから安いものだと思う。


落ち着いたらまた連絡します。

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