HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 28

やあやあ久しぶり。

どうにか話がまとまったよ、労わってくれ。


あの二人にコンビを組まれると激しく気力が削られるね。
彦と一緒にお呼ばれして言ったんだけど、二人して話し続けるからすごい迫力だったよ。

結局、彦のことはもう誤解されてるだろうし、そのまま裕福な町人の子供ってことで通すことにした。
だがうっかり俺の家との繋がりでもばれた日には、俺の毛はその日のうちに全滅するに違いない。

この年で丸禿げは嫌だ。
意地でも俺の素性は漏れないようにしなくては。

俺と彦とで考え抜いた設定はこうだ。
彦はとある事情でこの町に住んでいる知り合いに預けられている町人の子供である。
俺はその友人。
俺が時折薬草を採りに明け方に山に入る為、滑らないようにあの滑り止めを作ってくれた。

短い設定だが、絶対に崩してはいけない、ばれてはいけない大前提である。
ちなみに喜一君はそのまま俺の家の家人である。



現代ならそもそも子供が一人で預けられている時点で怪しいが、こちらではそうでもない。
家の事情、と言えば勝手に予想して納得されてしまうのである。
妾の子供だとでも思われているのだろうか。

まあこちらとしては素性が怪しまれなければ問題はない。


もとより、この店主と職人が勝手にすれば良かったものを、なんのこだわりか俺達が手を引くことを頑として許してくれなかったのだ。
あまり積極的ではなかった俺達に代わり、話を進めて取り決めを決めていったのはほとんど彼らである。

取り決めの内容は自体はいたって普通だ。

職人が中心となって商品を作り、店主が店の宣伝を兼ねて買い取り広告として使う。
ある程度広まったら色々な細工を施した、デザイン性の高い物を販売していく。
そして彦は初めに使う広告としての分と、それ以降の売り上げを一定の比率で受け取ることとなった。
その代わり、定期的に俺達が店に顔を出し、店内の全般の物の売り上げに関して協力をすること。

それだけである。
要は、アイディアを貰うわけだからけじめが欲しいのかね?
売り上げに協力って、何をすればいいんだろう。
サクラでもしろってことかね。


まあ、まさか自分達から売り上げを渡すなんて言い出すとは思っていなかったからそれには驚いた。
でもそうなってみると、間違えて呉服屋に入ってしまったのは正解だったかも知れない。
扱うものが高価だと言うことは、飛び交う金銭も高額である。
おまけに、金持ちの間に流行れば下の人間も憧れを持つ。
しばらく時期を置いてから、一般庶民向けの物も販売してみたらいいかもしれない。

そう思い至って、店主に低価格の物の作成も薦めておいた。
あくまで、軌道に乗ればだが。


なんだかいたく気に入られたようで、俺も彦も散々二人に付き合わされた。


落ち着いたらまた連絡します。

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