HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 29

やあやあ久しぶり。

ちょっと地味に凹んだよ、慰めてくれ。


年功序列って嫌いだ。
俺はそれを始めて痛感した。


何が起きたかと言うと、俺、やっぱり扱い悪いかも。
久しぶりに次男の立場を思い出した。
いや、だってずっと離れに居るから、最低限の人間としか接触しないんだよ。
だから気付いてなかったんだが。


昨日、母屋からおすそ分けが来たんだよ。
それは別に、今までも時々あったから良いんだけどね。
その内容が問題だった。

なんとメニューは卵。
別に生卵をそのまま食えって渡された訳じゃないけど、ショックだったよ。
だって俺、たまに届けられる鹿とか猪とか、肉類しか食べたことなかったんだ。
卵自体を食べたことがないわけじゃないが、いつも日持ちするように燻製や茹でて塩漬けになっていたりした。
卵というか、どちらかというと乾物だ。

それでも滅多な事では食べられなかった。
風邪がひどかったりすると、塩漬けを砕いた物が粥に入っていたとかそれくらいだ。
この時代の鶏はあんまり卵を産まないらしいし、鮮度が大事だから流通してないのかなって諦めてたのに。

それなのに、俺の所に卵が来た。
しかも、話を聞いてみると昨日までは生だったらしい。

たまたま届いた卵が普段より量が多かった。
父上を筆頭に、普段は上の人が食べて終わりになってしまうんだけど、今回は俺の所まで回ってくるほど量があった。

それで、あまり体の強くない白兎にも食べさせてやるように、って父上が・・・。
うん、いつも俺の所まで回らなかっただけで卵があったのかよ、ってことも気になるけど。

俺、体弱かったんだ?
そりゃあ体を冷やしたりすると、熱を出したりしてたけど。
ずっと子供の体だからだと思ってたよ。
周りに同じ年齢の子供がいないから気付かなかった。
そりゃあ、現代で暮らしてた時よりよく風邪をひくなあ、とか思ってたけど。
薬が未発達だし、子供だから、何より家の造りが寒いからだと思ってたよ!

自分の体だったのに今更気付いたことが、かなりショックだ。

そして俺以外、具体的に言うと父上や寅の膳には新鮮な卵が上ってたことにもショックだ。
俺だって新鮮な卵食いたい。

卵というか、具体的に言うとマヨネーズ食いたい。
この時代って調味料が少ないし、ソースとかケチャップとかバルサミコ酢とか作れないよなって諦めてたのに。
唯一、作れそうだったのがマヨネーズだったのに。
新鮮な卵は貴重なんだと思って我慢してたのに。

ひどいよ父上。
今度お呼ばれした時は、喜一君と一緒におどろおどろしい歌のオンパレードしてやる。
一人で厠に行けなくなるといいさ。

とりあえず今は、ありがたくも気遣いを頂いた卵粥を食べてしまうことにする。
母屋で作られて運ばれたので、かなり塩が強い。
これでは適当に野菜と水を入れて味を薄めないと俺には食べられない。
その分量も増えるし、彦や土岐も一緒に食べてしまうことにしよう。

食の追求への新たな決意を固めつつ、俺は乳母に言付ける為調理場へ向かった。







追伸、そういえば言い忘れた。
例の滑り止めだけど、高草履という名前で売り出すことになった。
貸し出しを専門にしてた時も、裾とか足が汚れないから評判が良かったのだ。
しばらくしたら、月の売り上げの取り分を貰いに行かないといけない。

落ち着いたらまた連絡します。

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