HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 30

やあやあ久しぶり。

最近食卓が豊かになったよ、祝ってくれ。


うっかり変な所で絡まれたおかげで、臨時収入が入ったし。
例の高草履だけど広告として使う分で、客に貸してもまだ余裕が出るように結構な数を作った。
今作ってあるのは、店の名前が歯の側面に掘り込まれた物で、赤い漆で仕上げた艶のある女物と、黒に赤で掘り込んだ男物の二種類だ。

雨上がりだけかと思いきや、湿気の高い日なんかも借りていく客がいるらしい。
まあ、着物に土がついてしまえば、始末が大変だからね。

評判なんかは普段の買い物の時に喜一君が仕入れて来てくれる。
あとはもうすぐ売り始める、販売用の細工入りの高草履も馴染んでくれる事を願うばかりである。



まあそれよりも、俺の関心は再び食生活の改善だ。

前から思っていたように、単に味噌や塩の量を減らしただけで解決するかわからない。
別の栄養が足りなくなるかも知れないし。
栄養の偏りは、思わぬ所で体調不良になって現れる。
地味だが影響は大きいので、戦々恐々してたのだ。
とりあえず味噌はやっぱり減塩で作って貰うことにした。

けどそれだと長く保存できなくなる可能性がある。
なので布を張った木枠に薄く延ばして天日で干して、駄目押しに燻製にしてしまうことにした。
味噌の燻製ができるかは知らないが、なんとなく腐敗防止になりそうな気がする。

あとはできるだけ風通しの良い所で保存して、一定量ずつ臼で挽いてやればついでに舌触りもよくなる。
薪の種類によっては匂いが付きそうだが、そこはそれ。
相性のいい薪を探すか、もしくは妥協である。
塩分過多よりはましだ。

漬物も試行錯誤中である。
塩分控えめにしたものを定期的に作るか、どうしても長期で保存するなら乾物を推奨している。
まあもちろん漬物にも干物にもせずに食べられる鮮度が一番ではあるが。

他には、一度の食事の際に使う野菜の数を増やして貰う事にした。
多少贅沢ではあるが、健康には変えられない。
味噌から取れるビタミン類が減ると支障がありそうだしね。

大豆といえばタンパク質だ。
タンパク質が減るのは、成長期の俺によってよろしくないので最近は豆腐屋の常連である。
大事な、「体を作る元」である。
現代で教わった、対子供向け栄養学だ。
正直、あとは「血や肉を作る元」以外は忘れた。

乾物も良く食卓に上る。
肉は主食じゃない上に、野菜ばかりでは寂しいので当然だ。
魚の干物は相変わらず塩辛いが、食べないわけにもいかない。
こればっかりはまだ俺にはなんとも解決策が見つからない。

それに、新しく食べ始めたのは小魚の類である。
献立改善をし始めてから知ったのだが、なんと未だに鰹節が流通していない。
出汁のない味噌汁だったのだ。
味噌の味が強いからか、まぬけなことに今まで気付いていなかった。
なので小魚を挽いて粉状にしたもので出汁をとっている。

カルシウムを摂ったら大きくなれるだろうか?
遅れて成長期の来た父上は、今では他と比べて小さいわけではない。
だが正直、もう少し上背が欲しいんだが。

椎茸を使うことも考えたが、養殖技術がなく、自然の物を採取するだけなので高価な物になってしまうらしい。
さすがにそれだけに金を掛ける訳にもいかず、椎茸はあきらめることにした。

離れの献立だけ母屋と大分違ってしまったが、まあ自分達で稼いだ?金であることだし、何より俺が塩辛い食事をしたくないのだ。
背に腹は変えられない。
今は大丈夫だが、高草履が上手くいけば定期収入も入る。
父上からの小遣いは今の所、初めに彦に買った着物の分だけしか使っていない。
人の金で贅沢するなんぞ、後ろめたくて仕方ない。


父上には塩分過多について忠告を入れたし、あちらでも塩を減らすことにすると言っていたので、乾燥味噌のことを伝えておいた。
ちなみに寅は時たま現れては、離れで食事をしていく。

塩の量には頓着しないのか、旨ければどうでもいいのか、わりと謎である。
普通は、慣れた味を求めるものだと思うんだが。


落ち着いたらまた連絡します。

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