HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 32

やあやあ久しぶり。

しばらく卵集めに奮闘しそうだよ、応援してくれ。

なんでそんなに卵が必要なのかって?
マヨネーズを作るために決まっているじゃないか。
あれは山で遭難した時も、持っていれば非常食になるぞ。



ところで出来上がったマヨネーズの感想だけど。

喜び勇んで味見した俺は泣いた。


なぜって、味がくどい上に生臭かったんだ。
懐かしのマヨネーズの味を想像して口にしただけに、その衝撃はすごかった。
思わず力が抜けて、しばらくへたり込んだくらいだ。

力の限り落ち込んで、それから考えてみれば理由は明らかだったよ。
まず第一に、それほど技術が高いわけじゃないから菜種のえぐみというか、菜種油自体に独特の味があった。

落ち着いて思い出してみれば、ドレッシングとかを作るのに使っていた、あの臭いのない油は現代でもかなり最近作られたもので、サラダを食べる習慣ができてから広まった物だったのだ。
現代で暮らしていた頃には、あまりにも当たり前に臭いのない油を使っていたから失念していた。

第二に、

「父上の馬鹿やろーーーっ。」



何度も言うが、我が家は貧乏ではない。
俺や寅が着せられているのも絹の着物だ。

だが、贅沢三昧できるほど金持ちではなかったのだ。

俺がなんの疑いもなく菜種油だと思っていた油は、実は匂いに影響がでないギリギリの範囲で魚油が混ぜられていたのだ。
そんな慎ましい節約も、今の俺には絶望的だ。
臭いに影響がない量でも、油を直接舌で味わうことになるマヨネーズにそれは致命的である。
結果、魚臭いマヨネーズが出来上がった。

しかも、配分が悪いのか卵の味が薄い。
とても普通にマヨネーズとして口にできる味ではない。

結局どうしたかというと、どうせ生臭いのだからと水で戻して塩を抜いた干物の表面に塗ってあぶり焼きにすることにした。
何度も重ね塗りをしながらあぶれば、どうにか食べられる程度の濃さにはなった。

その晩、膳に上ったマヨネーズであぶり焼きにした魚は、土岐にたいそう気に入られた。
確かにただの干物よりは美味しいのだが、俺には満足できない。
何しろ、干物にしか使えないのだ。
改良が必要である。

そして俺は再び卵を仕入れて貰う事を決めたのだ。


落ち着いたらまた連絡します。

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