HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 34

やあやあ久しぶり。

調子に乗ってた反動なのかね、慰めてくれ。


呉服屋からの帰り道。
軽い気持ちで進路を変更した俺は、今まで足を踏み入れたことのなかった地域。
商店が立ち並ぶ通りでも、裕福層が住む地域でもない、一般の人々の住む区画に足を踏み入れていた。

質素な暮らしをしていても、家だけは豪華に広かった我が家。
店構えも商品の一つである商店、もちろん裕福層の家とはまったく違う。
その区画は生活感がいっぱいに広がっていた。

そう、生活感である。
みすぼらしいわけでも、汚いわけでもない。
商店の立ち並ぶ通りの活気とも違う、人々の営みの作り出す人の気配、それがそこで一番目立つものだ。

町に出入りし始めたのもごく最近の俺にとって、そんな場所は始めてみるので目をひいた。
見慣れないのは俺だけなのか、彦や喜一君は特別なんの興味も見せずに普通にしているが。


様々な人々が溢れていた通りと違い、こちらの道は少しこじんまりとしていた。
そして当たり前なのだが、刀を差した人間や、身奇麗な商人達も見当たらない。
いるのは、付近の村から来たのか、籠を背負った日に焼けた顔や棒を担いだ行商、井戸端に集まる女性達に転げ回る子供達。
時代が違うためか、所々違う部分は多いものの、現代でみた時代劇のような、素朴な風景である。



興味を惹かれてしばらく見ていたのだが、周囲の目が集まりだしたので仕方なく帰ることにする。
すっかり忘れていたが、彦は初めて呉服屋に行ってからというもの、町に出る時は絹の着物を着て貰う事にしているのだ。
間違えて揃えてしまった着物一式ではあるものの、逆に利用価値ができてしまった為に今更戻すことはできないのだ。
俺も初回と同じ布地の着物で通している。
さすがに普段着にするのは慣れない、と彦の強い願いで離れにいる間には、今俺が着ている様な生地の着物を用意した。

枚数はあるのだし、気にせず着て貰って構わないのだが。
ある物は使えばいいのである。
その上、肌着の上に重ねるようにして着る構造なので、汗がつく等の生活感は皆無である。
付着するのは泥やほこり、雨の水くらいだ。
彦くらいの年齢になると着物に食事をこぼしたりもしない。

むしろ、彦が着れなくなったら俺が普段着ようか、などと考えながら帰路に着く。
もともと街道に沿って発展するので町の構造は簡単である。
基本的に大通りを挟んで並行に通りが並び、あとはその道同士の抜け道である。
方向を間違えなければどこからでも帰れるので、そのままその通りを突っ切って帰ることにした。




そして通りの終わる頃、普段の道からは大分離れた位置にある橋の下で、俺は拾い物をしたのである。















「父上、子供を5人世話をさせて下さい。」

そう話し掛けると、珍しく父上の目がぽかんと開かれた。



落ち着いたらまた連絡します。

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