HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 37

やあやあ久しぶり。

最近子供達のパワーが半端じゃないよ、労わってくれ。

とりあえず文字を教えてみたけど、知識はあっても別に邪魔にならないよね。
生活に役立つものなら尚更に。
読書き算盤ってよく言うけど、確かに最低限無駄にならない教養である。


薬草に関しては実地訓練。
午後は薬草を取りに山に繰り出している。
喜一君に付き合って貰う必要はあるけど、人里から離れた場所まで入り込まなければそれほど迷う心配もない。


というか、正直に言うと俺のお財布が厳しい。
当然といえば当然なんだけど、6人も個人で養ってればそれにかかる費用も半端じゃない。

着物は当然として、風呂も長時間お湯を沸かしたままにしておく必要も出てくる。
定期的に焼き石を入れるけど、石の方も時間がたてば冷めてもくるし。
なので多少なりとも暖めなおす必要がある。
調理なんかも、量が増えたから調理時間も延びるわけで。
薪の使用量も上がるのだ。
微々たる物ではあるが、毎日のことなので馬鹿にはできない。
薪と比べれば火力は落ちるが、燃焼時間の長い炭をメインにしようかと考え中である。

もちろん食費も一気に倍だ。
せっかく整えた食事環境なのだし、健康に直結するので元に戻すわけにもいかない。
ちなみに、小さい子供なんかもいるので、食事の時は乳母や喜一君に預かって貰っている。
いくら俺の精神年齢が高くても、体が小さいのでは食事の時の世話まではできない。
その点、乳母は慣れたものだ。
喜一君の方も兄弟でもいたのか、意外なことに世話をし慣れている。
こぼした米粒を拾ってやったり、箸の持ち方を直したり、案外世話焼きな事実を発見した。


最近は文字を教えたりもしているので、さらに紙代やらなにやら。
細々と考えるのを放棄したいぐらいだ。
でも考えないわけにもいかない。

俺と乳母と土岐と喜一君。
この面子は例え俺が破産しても問題はない。
俺が一存で変えた献立が元に戻るくらいで、基本的に最低限は父上に保障されている。

問題なのは彦と子供達だ。
彼らは俺が保護しているだけなので、家とはなんの関係もない。
俺が責任を持つことで認めて貰っているようなものだ。
彦の時は小遣いとして支度金を渡されはしたものの、現在は収入があるのでそれもないだろう。
よって俺は、完全に俺だけの采配で彼らを養っていかなければいけないのだ。

これが案外に厳しい。
支出は増えるが収入はさほど変わらない。
まだ高草履の競争相手も出ていない状態なので、定期的に収入があるのが唯一の救いだ。
しかしそれも、いづれは目減りしていくことになるだろう。

一つの商品で儲け続けるのは、現代のように流通がなければいずれ立ち行かなくなる。
狭い地域だけで商売をすることになるので当然である。
多少は外に出ることになっても、微々たる物でしかない。
範囲が狭ければ、誰もが持つ物になってしまった辺りで打ち止めである。
修理や時期物、付け替え用の小物なんかの収入はあるだろうが、現在の収益と比べ物にならない。

以前なら、その分だけでも十分だったのだ。
少し献立を豪華にして、彦を養うだけだったのだから。

しかし、子供達を拾った今となっては悩みの種である。

そんなわけで、今日も俺たちは山に登る。
そして実地訓練として薬草を集めては持ち帰る。

俺の手製の図鑑やら書物やらで学ばせてはいるが、薬草は実際に自分の手で採取するのが一番覚えやすいのだ。
匂いや生えている場所、微妙な色味の違いなんかは本では把握しにくい。
知っていれば確実に役に立つ知識なだけに、きちんと覚えて欲しい。

持ち帰った薬草は乾燥させたり、薬の状態にしたりして日持ちするようにしておく。
定期的に持ち出しては、彦の名前で紹介して貰った薬師や医者に売り渡すのだ。

こうなってみると、彦を家人にしないで本当に良かった。
彦の名前を最大限使うことで、「家」には関わりなく金銭のやりとりができる。
といっても、現状では全員を養って、少しの余裕があるくらいなのだが。
俺が養っているのか、家を提供しているだけで半分自立しているのか、判断は付きかねる所だ。

それでもまあ、子供達が笑っているのでそれで良いのだろう。


落ち着いたらまた連絡します。

番外 おみつへ
本編 38へ

表紙へもどる
分かれ道へ戻る
保管庫へ戻る