HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 4

やあやあ久しぶり。

やっと立てるようになったよ、祝ってくれ。

って言ってもまだまだ掴まり立ちから毛が生えた程度だけどね。
以前から練習してた甲斐があったよ。
普通の子よりも少し早いそうな。
大人の体と違って頭が重くて重心が取りづらい上に筋肉が弱くて踏ん張ってバランスを戻すのが難しいんだ。
けど良かった。
このままじゃハイハイのエキスパートになるところだった。
これで自分の行きたい所にいける!

まあ大抵乳母がぴったり着いて来るから無茶は無理だけどな。
だってまだよたよたしてるから。

そうだ、歩けるようになって良かったと思ったことがこの前一つあったよ。
なんかさ、たまたま乳母が席をはずしてたんだが。
ちなみに母親は大抵いない。
部屋も別だし。
武家ってこうなのかも知れないけど冷たいよな。

ああ、それで乳母がいなくて俺と寅が一緒だった時なんだが。
寅のやつ俺のこと頼まれてた癖にころっと忘れやがって一人で屋敷を抜け出したんだ。
我が家はぐるっと塀で囲まれてるんだが崩れてる場所を見つけてしまったらしい。
いくら家の傍だって言ってもこの時代まだ狼も出るし他にも時折猪やら夜盗やら出ることもある。

まあ世話するのは忘れても傍に弟がいれば少しは自重するだろと思って仕方なくえっちらおっちら後を着いて行ったんだよ。
あれは大変だった。
なんせ屋敷の中みたいに整えられてないから俺にとってはちょっとの下草がジャングルさ。
先走る寅を呼んで俺のこと忘れるなよってアピールしながら必死で歩いたさ。
そうしたら寅のやつ、戻ってきたと思ったらヤマゴボウの実を持ってたんだよ。
ヤマゴボウってあれだ、たまにその辺の林の中に生えてたりする濃い紫の葡萄みたいな実がなる植物。

ああ、つぶして色水でも作るのか、あれは綺麗な色が出るよなとかほんわかしてた俺が馬鹿だった。
あの馬鹿寅はあろうことか実を口に入れやがったのさ。
生まれ変わってから地味に鬱々しながら赤ん坊プレイを満喫してた俺のここ最近最大の驚きだったね。
旨い不味いかはともかくとして、あれは有毒植物だ。
比喩でなく、死ぬほど驚いた。

「あんぎゃっぁぁぁぁ"っ!」

思わず大声だしちゃったよ、寅若様と違って大人しくて手の掛からない二の若様って評判だったのに。
俺の大声に驚いて固まった寅の口に手を突っ込んで実を取り出す。
寅が死んだら家を継がないといけないとか色々あるけどそれよりなにより目の前で子供が危ないことしてたら止めるだろ。

速攻で遠くに放り捨ててついでに残りの実も奪い取っておいた。
まったく、一緒に居たのが子供らしからぬ子供の俺で良かったな。
下手したら死んでたってのに。

その後俺の大声を頼りに俺達を探し出した家人によって連れ戻されたんだが危ないことこの上ないので大声を出した理由を聞かれた時に実を示しておいた。
やっぱり現代と違って薬草とか自分達で探してるだけあって毒だって知ってる人がいた。
良かった良かった。
もし知ってる人が居なかったら池の鯉でも犠牲にして毒性を示さないといけないかと思ってたから。
寅が死ぬよりはましだけど鯉も死なないほうがいいよな。

しかし早くもっと自由に動けるようにならないとな。
あれ以来塀も修復されちゃったし、外に出るにはまだまだ掛かりそうだ。
ちなみに運動して汗をかいた上に疲れも溜まったのかその晩はきっちり熱を出して寝込んだ。

落ち着いたらまた連絡します。

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