HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 40

やあやあ久しぶり。

そろそろ秋になるよ、早いものだね。


盛大に母上に張り倒されたのも、随分前だ。
あの後、父上から聞いたけど、メダカで実験をしてたのを知って怒ったらしい。
そりゃあ、俺くらいの年の子供が次々と死体を作り上げていたら怒りたくもなるよね。
いくらメダカだっていっても。

でもさすがに、犬猫とか哺乳類を使うのは嫌だったからこその選択だったんだけど。
結局、殺してることには違いはないか。

母上の怒りももっともである。
実験のことは父上にも話してある。
けれど母上はなんで俺がそれをしてるのかは知っているのか、それとも聞いていないのか。
聞いていても関係なかったのか、それはわからないが。

さすがに父上も、いきなり打つとは思っていなかったらしい。
あとで盛大に心配していた。
だからって腫れている頬を触るのはどうかと思うけど。


母上からはあれから一度もお声が掛かることはない。
たまに父上の所に行く途中で姿を見掛けることもあるけど、すぐに歩き去って行ってしまう。
俺を産んだといっても、未だに20にも届かない年齢である。
よほど受け入れがたい出来事だったんだろう。
仕方がない。
そのうち落ち着くまで待つしかないのだ。







俺はといえば、ちまちまと薬草を売りさばいて貯めた資金で鶏を飼い始めた。
なぜ鶏かと言われれば、飼育しやすかったからだ。

子供の手でも育てられる家畜が他に思い付かなかったというのもある。
屋敷の周りを囲む塀に少し手を加えれば、それだけで脱走は防げるし。
餌も庭で勝手につついたり、野菜の切れ端だったり、加工途中で出た薬草の使わない部分をやると結構食べる。
体が小さいから庭で好きにさせておけば十分運動不足解消にもなる。


雄鶏が機嫌の悪い時に近づかなければ、他は総じて大人しいし。
一度、うっかり機嫌を損ねて追い回された。
喜一君に助けて貰ったけど、あれは怖かった。

子供の身長で、雄鶏は脅威である。
鶏、マジ怖い。

一定数増えたら仕返しに隔離してやることにする。
ハーレムから一転、独り身になって悶えるがいい。
他にも雄はいるのだ。


夜だけは小屋の中に集めて襲われないようにする必要があるが、例の雄、[暴君鶏](命名・俺)以外は良い子なので手間要らずである。
誤算は、庭の草取りが少し楽になったことと、虫が減ったことだ。
室内に入り込んでくる虫が嫌いだったので、むしろうれしい誤算である。


今はまだ数が揃わないので、必然的に卵も数が揃わない。
さすがに今はマヨネーズを作っている余裕がないので、それはそのまま皆の膳に上がっている。
そのうち、頭数が揃ったら卵を売ってみようかと思っている。
すぐに塩漬けにすれば持ち歩きも楽だろうし、医師にでも声を掛ければ滋養食として欲しがる声も多いだろう。

懐に少し余裕ができたら、子供達をもう少し遊ばせてやることができるんだが。
そんなことを考えながら、今日も定例である店主達との話を終えて帰る。
やはり、子供には伸び伸びと育って欲しいものである。




いつもと同じ、変わらぬ帰り道。
今日も同じく屋敷に帰る。
そして今日は留守番をしている子供達に、笑ってただいまと言うはずだった。


「あ、しろうさま帰ってきたー。」

一日留守にしていた間に増えた頭数(あたまかず)。

いつぞやの誰か達を髣髴とさせるその格好。
とりあえず思ったことは、まず風呂を焚かねばいけないな、ということだった。

大人の悩みは尽きないのである。


落ち着いたらまた連絡します。

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