HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 44

やあやあ久しぶり。

金がないよ、助けてくれ。


離れだけじゃさすがに足りなくなって、仕方なしに家を建てたのも記憶に新しい。
けれど、正直に言って、とても痛い出費だった。

少し前には、今頃の時期になったら、またマヨネーズを作れる余裕ができるかもしれないと思っていたのに。
現実は、一切の無駄使いをせずに、日々堅実に過ごしているのみである。

子供達に苦労させる訳にもいかないのだから仕方がない。
将来役立つ技術の、実地訓練になるならともかく。
単なる労働をさせるのは俺が嫌である。
それだったら、マヨネーズのない食卓の方が良い。







それに最近やっと準備が整ったので、新しい収入に向けて絶賛励み中なのである。

考え付いたのは結構前だったのだが、いかんせん、条件が整わなかったので実行できなかったのだ。
改善したいことがあっても、現状ではどうにもできないってことが多すぎる気がするよ。
まあ、今回はようやく条件が整ったのでよしとするが。


今回呉服屋の主人の所に持ち込んだのは、水である。

水は水でもただの水ではない。

薬草水である。

前回の高草履も、正確には呉服屋の扱う部類の物ではなかったが、そこはそれ。
儲けが出れば良いのである。
よほど栄えた場所にある大棚の店でない限り、商品を一本に絞って儲けを上げ続けることは難しい。
商売をする地域が狭くなればなるほど、同時にいくつかの商品を扱う店も増えてくる。

まあ、正直に言えば、儲かるならなんでもござれ、なのである。
○○屋、などと分けているのは、初回の客に店名で売っている物の概要を伝える為である。
逆に言えば、周囲の人間が、売っているものを把握しているのであれば店名はなんでもいいのである。
なんという逆転商法。




まあ、それはともかく。
春から今まで、ずっと溜め込んでいた薬草類や花を乾燥させて保存してあるのだ。

喜一君や、手先の器用な子達に協力してもらって川に仕掛けた物。
それは、巨大な蒸留装置である。

仕組みは簡単だ。
川辺で火を焚き、大き目の容器で水を沸かす。
その上に置いた網に、薬草なら薬草、花なら花で個別の状態で敷き詰めていく。
あとは、竹パイプに繋いだ蓋で蒸気が漏れないように密閉するだけである。

パイプは川の底に沿って川下でまた川辺に出てくる。
薬草や花の成分を含んだ蒸気は、川の水で冷やされて再び水に戻る。
その先に壷なり瓶なり置いてやれば、特性薬草水をゲットだ。
ついでに、オイルまで採れる。
さらに言えば、パイプの影に集まってくる魚も、一緒に罠でゲットである。

最近、魚が良く膳にあがるからか、子供達の魚の食べ方が上達して、少し嬉しい。




今まで、量が揃わなくて先延ばしになっていた。
だがこれからは継続的に作成できる程の量が揃った。
一度売り出してしまえば、継続的な収入が期待できる一品である。

いつの時代も、女性向けの商品は需要が高い。
しかも、成分毎に効果も異なるし、消耗品でもある。
効果は二の次に、香りを求めて作ったものもある。

塗って良し、飲んで良し、食べて良し、使って良しである。

肌に塗れば美容に。
口にすれば体臭、口臭に。
菓子に仕込んでもいいし、香水として使ってもいいのである。
小物に仕込んでも、染み込ませてもいい。


美容に関心のある女性は興味を示すだろうし、他にも使い道は色々である。
使えばすぐなくなる物だけに、定期的に収入が入るのも美味しい。
以前のように、商品が行き渡った時の心配をしなくていいのだ。
これで金銭面での心配をすることが少なくなるに違いない。


抽出する元になる薬草の成分や効能を熟知していなければいけないため、これは商売敵が出ることは当分心配しなくて良い。

普通、医師や薬師はこんなものに手を出そうとしない。
素人が下手に手を出そうものなら、勝手に自爆してくれるだろう。
悪い面での効能も強く引き出してしまうので、専門知識を持った集団にしか作れないのだ。


専売特許だね。

ちなみに、類似品での苦情とかで汚名を被らない様に印をつけることにした。
この印なしで売ってる所のは類似品ですよってことだ。

月を背後に薬を調合している、兎の絵。

薬を扱う兎(つまり俺)に縁のある集団だからって安直過ぎたかね?
呼び名がないのも不便なので、彦を中心とした子供達の集団を玉兎(ぎょくと)と名付けてみた。

玉兎っていうのは月の異称で、兎って文字が入ってるから俺とも関係ができるし。

いいじゃないか、子供に自分にちなんだ名前を付けたいのは微笑ましい親心だよ。
あ、ついでに。
いつまでも家とか屋敷とか呼んでるのも紛らわしいので、彼らの住んでいる場所は玉兎寮と名付けることにした。



落ち着いたらまた連絡します。

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