HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 47

やあやあ久しぶり。

最近やっと暇ができたよ、労わってくれ。

なんだかんだで、随分長い間、子供達に掛かりきりになってたけど、やっと落ち着いてきたよ。

一番初めに玉兎寮で世話を始めた子供達だけどね。
彼らもそろそろ、こちらの時代では元服しようと思えばできる年齢なのだ。
まあ、堅苦しい式を執り行う必要もないし、まだまだ見た目も子供なんだけどね。
成人と見ようと思えばできるって話だよ。


けど、さすがに何年も面倒を見てきて情もあるし、そのまま寮にいさせることにしたよ。
そのまま年下の子の面倒を見たり、俺や彦の代わりに先生みたいなことをしたりしている。
人数が増えてきた頃から、年長者と年少者をペアにして助け合って生活する様にさせているんだ。
親は作ってあげられないけど、彼らなりに、家族意識を強く持てたらいいなと思って。

子供達には基本的に、やることをやれば好きにさせているから、たまに覗くと何か作っていたりする。
趣味に走り出した奴とかもいて、丁度いいから音楽の授業を始めたのも、子供達にとって良い経験になるだろう。



結局、見つけたり増えたりする毎に追加で養っていくから、玉兎寮の人数はあれから増えた。
意外に評判が良いらしくて、子供を預かってくれって言われることもある。
さすがにそれは断っているけど。
だって別に、養ってくれる親がいるなら俺が面倒見る必要はないし。

一度なんかは、無理矢理子供を置いていった商人もいたよ。
彦が調べ出してしっかり親元に帰したけど。
表立って出れない俺の代わりに色々回るせいか、随分とコネを持ったみたいだ。
彦もずいぶんとしっかりして来て、養い親としても大満足だ。
それ以降は、同じ様なことがない様に、彦が身元を調べてから玉兎寮で受け入れるようにしている。

彦、校長先生みたいだね。
まだ子供って言っても良い年齢なのに、進んで俺を助けてくれる。
ありがたい限りだ。

俺なんか、家関係のこととか面倒だし、早く楽隠居にでもならないかなって考えてる位なのに。
いや、今でも立場上では隠居してるのと大差ない状態だけどね。

しかし、そのままにして置けなくて拾ってしまったけど、問題がなければない方が幸せだ。
なんでもない日万歳、である。






俺はというと、子供達が勝手に事業を回してくれることもあり、割と余裕のある暮らしをしている。
俺の方も、なんだかんだでじっくり落ち着ける状況を満喫しているのだ。
寅が元服して嘉実になろうとも、俺の生活自体は変わってない。

ここの所の楽しみは、再びの献立の改善である。
なんせ、ある程度なら金も注ぎ込めるし、無い物も作ってしまえるから余計に楽しい。

最近は、塩分過多な干物をどうにかするために燻製を作ったりしている。
土地柄と玉兎の名前、金銭的な余裕がないとできないのだが。
簡単に言うと、海で取れた魚を塩漬けせずに刃を入れて湯に通してしまう。
その後は燻製にして、川を使って一気に運び込むのである。

以前は材木を運んでいた位なので幅も広い。
川縁に頑丈な滑車をつけて、荷物の載った船と繋いだ紐の先に、重石代わりに別の船を付けてやればいいのだ。
井戸のつるべを横にしたようなそれは、流れに沿って何度か付け替えてやる必要性はあるが、漕いだり引っ張ったりするよりは早い。
薬草水や他の工芸品を始め、下りの船に乗せる荷物も豊富にあるので、重石に困ることも無い。

運ぶ速度が速い上に燻製にしてあるから、塩漬けにしなくても事が足りる。
おかげで塩辛い干物に苦労することがなくなった。
今までは輸送途中で痛んでしまう為に流通しなかった類の魚も手に入る。
ついでに町中の食糧事情も改善して、地域の目玉も増えるのだ。



魚は育ち盛りの子供達にも有用である。
沢山食べて頭を良くすると良いよ。
医食同源から始まる、食事と健康の繋がりを教え込んでる身としては、健康に生活できる食材を提供したい。
燻製を作って貰っている所で、鰹節的な物を作れないか頼んであるので、さらに今後への期待も大きい。




他には、目下(もっか)、猟師さん達から教わった虫に効く薬草を用いて、養蜂にも手を出している。
さすがに薬草に詳しくても、虫への効能は知らなかったし。
蜜欲しさに蜂に刺されるのは勘弁だ。

薬湯や粉薬、丸薬のあまりのまずさに、甘いものが欲しいと初めて考えたのはいつのことか。
やっと希望が叶いそうなのである。


元々、香料を得るために、敷地内に二ヶ所作ってある畑の一つは花畑なのだ。
そちらに程近い山の中に、試験的に数個の巣箱を置いてある。
スズメバチが入れないように入り口は狭く作ってあるので、そうそう全滅するようなことはないだろう。
うろ覚えの知識でしかないが、板を重ねて、箪笥を倒した様な形状の巣箱にしてある。
多分、女王蜂のいる辺りとか、大事な部分を残しておけばいいんだと思う。
巣の中の構造に関しては、何度も蜂の巣をゲットした経験のある猟師さんに聞いた。

蜜蝋の作り方は知らなかったが、同じく猟師さんが知っていたので良かった。
暖めればいいかな、と思っていたのはある意味正解で。
お湯で暖めて溶かしながら濾して、そのまま放っておくと冷めて蝋が浮いてくるらしい。
蜜蝋にも何か使い道があった気がするので、ゆっくりと考えてみることにする。

ただ、問題が一つ。
巣箱を置いてしまうと、薬草を育てている方の畑でも育てる薬草が制限されてしまう。
健康に良い効能ならいいが、うっかり蜜に毒性のある植物を育てていると、その蜜まで混ぜられてしまうのだ。

毒だと聞いたが実は砂糖、安全性が確実だから笑いの取れるお話になるのだ。
見た目が蜂蜜で効能は毒物、なんて冗談じゃないのである。

すでに設置してしまったし、蜂を刺激したくないのでしばらくは薬草畑の植物を制限するしかない。
一度目の採取が終わったら、巣箱を置く場所を考え直そうと思う。
うっかり毒を食らうのは勘弁して欲しい。


落ち着いたらまた連絡します。

本編 48へ

表紙へもどる
分かれ道へ戻る
保管庫へ戻る