HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 50

やあやあ久しぶり。

子供達から連絡が来たよ、祝ってくれ。


可愛い子には旅をさせろって言ってみたはいいけど、やっぱり心配なものは心配だった。
だって、今までずっと世話してきて、一緒に生活して来たんだ。
手元にいれば異変があってもすぐ気付けるし、風邪でもひこうものならすぐに対処してあげることもできたからね。

あちらに着いたら手紙を送るって言ってたけど、これまで毎日そわそわして過ごしていたのだ。
案外、俺も心配性である。



ようやく届いた手紙によると、玉兎出身の子供達は、なぜか玉兎として雇われることになったらしい。

玉兎としてってどういうことだ。

そう思って読み進めれば、所謂、客員の待遇として迎えられることになったらしい。
てっきり、就職する、つまりあちらの一員になるんだと思っていたので肩透かしを食らった。
なんでも、個人の能力もあるけど、玉兎とのパイプ役、所謂駐在員みたいな感じで勧誘されたんだそうだ。
玉兎って言っても、結局は薬師集団だし、あれか。
病気に備えて置いておく、置き薬、もしくは命綱ってことか?
確かに玉兎の薬の知識は、常に検証を繰り返しているので市井の医者よりは安全性が高い。

しかし、それなら初めからそう説明して話を通せば良かったのに、なんで事後承諾なのかね?
謎である。

まあ、俺としてもあちらで就職されて家臣になってしまうと寂しいからいいけどね。
玉兎のままで良いって認めて貰っているなら、俺も子供達の周囲に気が咎めずに助けてやることができるし。


里帰りも認めて貰ったらしいから、残った子供達も喜ぶ。
年長者が年少者をカバーして生活するスタイルで育てたせいか、うちの子供達はとても仲が良い。
たまには生き抜きも必要だろうと時折開催する、運動会や文化祭的なイベントのおかげもあってか、連帯力は抜群である。

以前は生活で精一杯だった、辛い生活を送っていた者も多くいるせいだろうか。
それとも、俺に似たのか、玉兎寮の子供達は総じてイベント好きである。

例えば、花見をしていると、いつのまにか楽を奏でだす者、踊り出す者、唐突に連歌を競いだす子達がいたかと思えば、いつ作ったのか、花の香料の入った新作菓子が出てきたりする。

自分で将来を選べる様に、幅広くいろんなことを教え込んできた。
それぞれ、自分の得意分野というか、好きな事を見つけられて喜ばしい限りだ。
普段は自由気ままに自分達の好きなことをしているけれど、ことあるごとに俺の所に来ては自分の考えたアイディアだったり、作ったものだとか、勉強の成果だとかを褒めてくれとばかりに披露してくる。
手塩に掛けて育てた子供達の可愛らしい様子に、俺は大満足である。
猟師さん達からの預かり子達もあっという間に馴染んで、これまた白兎様白兎様と慕ってくれる。


こんな可愛い子供達だ。
俺にしてやれることがあるならしてやりたいのは当然である。




というより、やらせてくれ。

おなか壊してないか?風邪ひいてないか?
ホームシックとかないよな?
ご飯はちゃんと食べてるか?


保護者としては心配でたまらない。





そしてそこまで考えて気付いた。

玉兎で育った子供達が別の場所で生活して不便していないはずがない。
当たり前なせいで、今更気付いた自分が間抜けである。

風呂に湯を張って浸かるのは、湯治目的の温泉でない限り外では滅多にしない。
俺が散々改良しまくった献立だって、材料さえあれば作れるものの、そもそもその材料が流通していない。
なんと言っても、俺がわざわざ作らせて取り寄せていたりするものだってあるのだ。
あちらでは手に入らないだろう。
ああ、布団は持っていったんだろうか。
それともあれは、この辺では大分浸透したし、外にもあるんだろうか。

心配する材料があとからあとから駄々漏れである。


落ち着いたらまた連絡します。

本編 51へ

表紙へもどる
分かれ道へ戻る
保管庫へ戻る