HOME > 兎穴の分かれ道 > 保管庫 > 早く隠居したい~マヨネーズを目指して~ > 本編 52

やあやあ久しぶり。

最近は研究で忙しいんだ、手伝ってくれ。


研究って言っても、基本的にやってるのは土をかき回したりするのがほとんどだけどね。

今現在、俺の頭を悩ませていること。
それは旅立った子供達の栄養状態である。

手元から巣立ったんだから、当然だが、今までと同じ食事を取らせることができない。
いや、料理はできるんだよ、料理は。
特になることは覚えろって方針の玉兎寮だから。
幼い頃から当番製で料理をしていただけあって、男女の区別なく料理はできる。

問題は材料がないことな訳であって。

とりあえず、日持ちのするものは送った。
けど、いまだ成長期のはずな子供達にはタンパク質が必要なはずである。
玉兎寮では肉が手に入っていたし、鶏もいるので卵も取れる。
香料なんかに使った花の廃棄部分に当たる、葉っぱや茎なんかを餌に流用していたので、ついでにエコロジーでもあった。


だが、さすがに。
就職先の子供達は、当然ながら、玉兎寮みたいに山の中に住んでいるわけではない。
穀物や野菜くずなんかで飼う事もできるが、なんとなく、そうなると今度は鶏の栄養状態が気になる。

実際どうなのかはおいておいて、結局、ミミズコンポストを作ってみることにしたのだ。
と言っても、森から取ってきた腐葉土を元に、野菜くずやら使えそうな物を混ぜ込んでいるだけなのだが。
ミミズは一緒に掘って来た。
飼育していればそのうち増えるだろう。

ちなみに、初回は見事に脱走されたので、今は容器の縁に蝋と油を塗り込んである。
ねずみ返しならぬ、ミミズ返しである。




肥料を作って新鮮野菜を収穫、ミミズが増えすぎたら鶏のご飯である。
減塩生活をしている俺や玉兎寮の子供達にとって、必然的に少なくなる味噌の使用量からくるビタミン不足は重要な問題だ。
俺たちの食卓に、新鮮野菜は欠かせないものになっている。
トマトみたいな特殊な性質でも持っていない限りは、痩せた土で作った野菜には栄養も少ないし、それなら肥料を作ってやるまでである。









関係ないが、玉兎寮の子供達は例外なくぷにぷに肌につやつやの髪である。

最近は、町の方にも風呂屋が増えたせいか、他の地方から来た人間に比べれば町の人間は肌が綺麗である。
特に、いつの時代も欲求は同じなのか、美容に熱心な女性の肌は綺麗だが、それでも玉兎寮の子供達には適わない。
身体に良い状態を日常としているか、していないかの顕著な例だ。

毎日薬草水の風呂に入り、シャンプーで髪を洗い、栄養のある食事をしてストレスなく過ごす。
適度に運動もしているので不健康になるはずもなく。
勉強に、趣味に楽しく過ごさせていた生活のたわものである。
きつい労働を課しているわけでもないので、無茶をして体を壊すこともない。


すくすくと健やかに育ってくれた子供達は俺の自慢でもあるのだ。
断じて不健康な生活に甘んじさせてなるものか。






そんなわけで、ちまちまと土を混ぜているわけである。

とりあえず、試験的に作った分は土岐にかき混ぜて貰っている。
始めは自分でやろうと思っていたんだが、土岐に止められたのだ。
生まれ付き、至って健康ですと胸を張って言えない体質な俺である。
心配ですと言われると俺も断れない。

だが、かなり大変そうである。
普段から熱心に身体を鍛えている土岐でなければ、かなり苦労するかもしれない。

しかし、今更だが、土岐もよく育ったものだ。
俺や寅は父上の影響なのか、たいして影響はないのだが、幼い頃から栄養状況が良かったおかげか、土岐はグングン背が伸びた。
体格も良い。
守役として必要だと言って普段から武術の稽古に力を入れているが、天職じゃないだろうか。
彦は普通より少し背が高い位なんだが。

カルシウムを摂らせ過ぎたんだろうか。
まあ、着物を新調する時以外は特に不便はないようなので良いのだが。
それに幼い子供達は、土岐に登ることをたいそう気に入っている。
両腕にぶら下げてやるのは、身体の年齢が釣り合っていれば俺がやる役目なんだがなあ。
お父さんと子供達って絵は、正直ちょっとうらやましい。




それはともかく。
子供達に送る分と、次から作る分は簡単に混ぜられるように仕掛けをつけておこう。
単に梃子の原理なだけだけど。


落ち着いたらまた連絡します。

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